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第270話 

遠藤西也から一輪のバラの絵文字と共にメッセージが届いた:【君こそが、君が言っている可愛い女の子だと思うよ】

松本若子はその言葉に、自然と微笑んでいた唇のカーブがゆっくりと収まっていく。彼女は画面に映る文字をじっと見つめ、不安な静寂に包まれていた。

眉をほんの少しひそめ、胸の奥に何とも言えない不安感が生まれた。

彼女は会話を最初からもう一度読み返し、遠藤西也が最後に送った「君こそが、君が言っている可愛い女の子だと思うよ」という言葉に目が留まった。

唇を噛み、少しの恐れが目に浮かぶ。

若子は慎重に【あなた、勘違いしてると思う】と打ち込んだが、すぐに消し、

また【もしかしたら、見間違えたんじゃない?】と書き直す。

しかし、それも削除し、さらに【私はそんな純粋な人間じゃない、普通のつまらない人よ】と打ってみたが、

それも結局消してしまった。

いや、待てよ…もし自分が勘違いしていたらどうしよう?それでは自意識過剰だろうか?

もしかすると、遠藤西也は単に何の意図もなく、軽く言っただけかもしれない。彼女はただ敏感になりすぎているだけで、ことを複雑に考えすぎているのかもしれない。

若子は心の中で自分に言い聞かせた。「考えすぎるのはやめよう」

この手の「錯覚」を自分は何度も経験してきたのだ。

とくに人が慌てているときは、何もせずにいる方がいいとわかっている。焦って行動を起こせば、かえって失敗するだけだ。

彼女は微笑みの絵文字を送り、【ちょっと眠くなってきたから、もう寝るね。おやすみ】とだけ伝えた。

遠藤西也からすぐに【おやすみ】と返信が届いたが、

その後に小さなハートの絵文字が続き、なんとそこには「愛してる」という言葉が書かれていた。

若子はその文字を見て、驚きのあまりソファから思わず飛び起き、目を見開いて画面をじっと見つめた。

松本若子は、表情スタンプに表示された「愛してる」の二文字をじっと見つめ、何度も何度もその意味を考え込んだ。

これは彼が軽い気持ちで送ったものなのだろうか?

もしかしたら、無意識のうちに選んだだけかもしれない。

若子は少し動揺し、頭を掻きながら、不安な気持ちで対話画面に【その絵文字は適当に送ったんだよね?】と書いた。

しかし、送信ボタンに指を伸ばしながらも、その手が止まった。

もし自分の勘違いだったらどうしよう。そ
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